先日はSALONAIRに出演させていただきありがとうございました。
今回は後記ということですが、先日のトークで話し切れなかったことを少しトーク内容と重なってしまう部分はあるかとは思いますが、改めて書きたいと思います。
<渡航のきっかけ>
日本を離れようと思ったのは、大学院を出てから1年弱アニメーションの仕事などをしていたのですが、日本で活動しているだけでは選択技は限られたもので、知り合いとは仕事の取り合いをしているような状況で、その中で活動するよりももう少し、活動の拠点を広く持っていればそれだけチャンスや選択技が増えるはずだと思っていたので、いつか海外ではと思っていました。特に日本のインディペンデントのアニメーション作家で海外で活動している人は少ないのでそういう点でも他の作家達とは何か違うことができるだろうと考えていました。それでもいざ海外へと踏み出す一歩の勇気がなかったのですが、文化庁の海外派遣制度のことを知る機会があり、年齢的にも26歳だったので、今行かなかったら一生海外に行かないままになってしまいそうだなという思いがあり、応募することにしました。
<モントリオールを選んだ理由>
場所はカナダのモントリオール。ここを選んだ理由はカナダ映画制作庁(National Film board of Canada、以下NFB)があったからです。NFBは国の運営によって映画制作をする機関で、昔から数多くのカナダ人監督や外国人監督がアニメーションとドキュメンタリーフィルムを制作してきました。特にモントリオールにはNFBのスタジオがあり、カナダでも特にインディペンデントのアニメーション作家が多い土地です。様々な国から様々なバックグラウンドを持った作家が来ているわけですから、それぞれのやり方があるはずで、日本で自分が見てきたやり方とは違うものがあるんじゃないか。そういうものを見て自分の今後の活動に生かしていきたかったのです。
<カナダのアニメーションの製作状況、助成制度>
そのために、アニメーションの製作に関わる人達に会いに行き、インタビュー等をして情報を集めてきました。
カナダのアニメーションについてはもちろん行く前から見てきましたし、日本からでもある程度調べることができました。しかし、人から聞いたりインターネットで調べて得た情報だけでは、そこから想像することしかできません。行ってみたら全然違ったということも考えられるわけです。その土地の文化や生活様式、言語等、様々なものが影響して、環境は成り立っているはずで、その環境から生まれる作品や作家を囲む空気を実際に感じたかったのです。実際、カナダの良質なアニメーション作品はインターネット上で観ることもできますが、それ以外の作品というのも数多く存在しています。
特に知りたかったのは、アニメーション製作の資金をどのようにやりくりしているのかという点です。何を当たり前なことをと思われる方もいるかもしれませんが、アニメーションは他のメディアに比べて制作に時間がかかるメディアですし、ほとんど一人で製作の全てをするインディペンデントの作家にとっては、今後制作を続けていく上では製作資金をどう確保するのかということはとても大切なことであり、難しいことです。もし資金を集められないならば、仕事をして得た自己資金から捻出するわけですが、そうしていると制作の時間がどうしても削られていきます。アニメーション作家はそういったジレンマを抱えているため、制作を続けていける作家は多いとは言えません。
カナダのアニメーションというと、どうしてもNFBで製作されたアニメーションの印象がどうしても強いと思います。映画祭でも必ずといっていいほどNFB作品は上映されますし、自分もそういう印象を持っていました。しかし、実際にはNFBとは関わらずインディペンデントで活動を続けている作家もいます。そういう作家はNFBで制作するよりも、少ない予算でも助成金を得て制作する方が良いと考えています。実際、助成金と映画祭等での賞金で生活と制作を両立している作家もいます。NFBは国営の機関ということで、様々な場面で時間がかかるようです。例えば、作品の内容を一部変更するにしてもその申請に時間がかかってしまう。その点、カナダやモントリオールのあるケベック州の助成制度では作品内容の変更も自由に行えるような制度もあります。作家の制作スタイル等によってどのような方法で資金を確保するべきなのか向き不向きはあると思いますが、各作家には日本以上に選択技があるという点で作家にとっては良い環境であると言えると思います。
また、カナダのアニメーション作品は助成制度の充実もあり、1つの作品でも様々な種類の助成を受けている作品をよくみかけます。日本の若い短編アニメ作家の作品ではあまり見かけませんし、それだけ労力がかかり大変ですが、そういうこともどんどんやっていくベきだと思います。日本だけで活動しようとすると、どうしても限られた助成金を皆で取り合うだけになるので、そういう点で日本に留まらず海外にも目を向けていくことは1つの有効なあり方だと思います。
今後これが自分のやっていくべき方法なのかはまだ分かりませんが、これからも探りながら自分なりの方法を見つけていきたいと思います。
視聴者の皆様、ALIMOさん、大野さん、お付き合いいただきありがとうございました。
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