Q:NYの録音スタジオの環境はどんな感じですか? 例えば料金や借りるまでのシステムなど知りたい!
A:ごめんなさい、私は今奨学金で暮らしている身で、お給料を貰ってはいけない=レコーディングセッション(レコーディングのお仕事をこう言います)に参加できない身なので、スタジオのことはよく分からないです。。。NYにはさすがに音楽の街だけあって、数々の有名スタジオがありますが、不景気で廃業に追い込まれてしまったスタジオもあり、日本と状況が似ています。
Q:活動面で他に気になっている国はありますか?
A:うーん、ジャズはやっぱりNYが一番ですね。ジャズの巨匠は圧倒的に数多くNYに住んでいますので「日常生活で偉人に会える確率」が他の場所と違いすぎなのです。アメリカの中での他の都市すら検討したことがありません(笑)。ただ、将来作曲家としてもうやりたいだけ色々やって、後は余生をゆったりと・・・となったらドイツへ行くかもしれません。ドイツには公立のジャズバンドがいくつかあってアメリカのバンドよりも予算があるので、定期的に大きなコンサートやCD制作をやらせてもらえる可能性があり、これまでにも数々のビッグバンド作曲家がドイツで制作活動をしています。私の先生も今、ドイツのフランクフルトにあるジャズバンドの音楽監督とNYでの生活を兼任しています。
Q:偶然性や即興的要素は曲を書くとき、どれくらい意識してますか?
A:ジャズにはもともと「アドリブ」の要素が含まれているものなので、楽曲を作る際に必ず1カ所はアドリブで演奏する箇所を作ります。それはもう何というか、癖ですね。日本人が家に帰ったら靴を脱ぎたくなるのと同じで、私は、曲を作るときに必ず1カ所はアドリブにしたい。舞台にたとえると「こちらが決めた台詞だけで表現をしてください」という状況より「ここは、あなたがその時思った台詞を言ってくれればOKです」って箇所があった方が、演者らしさがよりダイレクトに出るのと同じで、即興で演奏してもらう箇所が残っていた方が、演奏家の個性がより強く濃くダイレクトに出るのですね。で、私はそれが快適なんです。
アドリブの箇所以外でも、私は「その時のひらめき」みたいなものをとても大事に思っています。
他の芸術家の方もこれは同じだと思うのですが、「新しいひらめき」が1つも入っていない作品はただの過去の焼き直しになってしまって面白くないし、でも「ただキテレツなだけでは、新しいかもしれないがバランスが悪くて楽しめない」ですよね。これは音楽でも顕著で、特に、音楽って結局からだで楽しむものだからだと思うのですが(耳で聞くだけじゃなく、リズムを取ったり、合わせて口ずさんだりね)、バランスが極端に悪いものって心地よくないのですよ。だからみんな、ある程度心地よいものを作ろうとするのですが、そうすると簡単に「これ○○のパクリだな」「焼き直しだな」ってものになってしまうんですよ。いとも簡単にその罠にはまる。けれども、「その時その時のフレッシュな感覚や、その場で思いついた即興的なフレーズ」をいつも、常に大事にして、何か「思いついた!」って時にすぐにキャッチアップして、それを作品に盛り込むように気を遣っていると、マンネリ化しすぎたり、焼き直しの罠にはまりすぎたり、そういう危険性から逃れやすくなるんですよね。
私たちの生活で完全な偶然のひらめきなんて全くなくて、全てが体験に基づいているものなので、3日後くらいに譜面を見直してみると、あれ、これ前にやったのと似てるじゃん、みたいなこともたくさんあるんですが(笑)、ま、それはそれで楽しいのでね、楽しみながらやってます。
Q:NYの生活や活動のなかで、思った以上に良かったこと、がっかりだったことを聞きたい!
A:思った以上にがっかりだった、というか、びっくりだったことは、ごくごく一般化して言ってしまいますがアメリカ人の仕事の精度が(平均化・一般化すると)悪いことですかね。日本人だと自分がやっている仕事を「適当にやる」とか「100%完成していないのに帰宅してしまう」とかありえないことだと思うのですが、こちらでは平気でそれをやりますからね。だから街は汚いし、電車はすぐ止まるし、台風の後復旧が遅いし、買った品物はすぐ壊れるし、支払った家賃を支払ってないと言われてもめるし、郵便局がものをなくすし、到着予定日までに荷物が来ないし、あれこれ大変です。この話をしはじめると、これだけで1週間くらい話せるので、ここまでにしておきますが、階級化社会ともこれは関係があると思っているンですよ。頑張っても上の階級に上がれる訳じゃないから、頑張らない、って人が労働者層に多いんですね。適当に楽しくやれてれば、良いんです、みんな。別に。日本は今、階級差がはっきり出始めていると言われていますが、将来こんな社会になっちゃったら私はちょっと嫌ですね・・・。
思った以上に良かったことは、思った以上に更に更に、ジャズの大スターと日々、会える!ということです。NYのマンハッタンってとても面積的に小さくて、杉並と世田谷足したくらいしかないのですが、その中に偉人がごろごろ居ますからね。すぐ会える。一日に何人も会えることも。そういうのってやっぱり、凄いです。偉人達はやっていることの質・量・規模が違いますからね、日々のちょっとした台詞の中にも物凄く深い話が含まれていたりします。そういう人たちって、日本にいたら2年に1回・一人やっと会えるか会えないか、くらいです。それがこちらでは、その気になれば1日3人くらいずつ会える。物凄い違いです。
私はジャズをやるなら、たとえ一時期貧乏になっても、日本での活動履歴が減ってコネが減ったとしても一度ここに来て住むべきなんじゃないか、と自分が来てみて本当に強く思いましたよ。あ、それと、ここには「そういう覚悟を決めて、人生のあれこれを棒に振ってでも勇気を振り絞ってNYへやってきた人」が世界中から集まって来てますので、町中でふと出会う人たちも覚悟決まってるかっこいい人が多くて、楽しいです。そういう街は世界中でNYしかないんじゃないかな?と感じ、ここに住んでいることを誇りに思う毎日です。
みぎわさん、ご回答ありがとうございます!
0 件のコメント:
コメントを投稿